社長のBLOG
拝啓 都市農業を応援いただいている皆様
今日は、くにたち村酒場で、とある商業高校の先生とお話をする機会がありました。
その先生は、改革期にある商業高校のカリキュラムに(より実践的なプログラムが望まれる)、大きな可能性があることを熱く語っていらっしゃいました。
私もまったく同感です。
商業高校の実際を詳しく知っているわけではないですが、高校のうちから商業を学ぶというのはたいへん重要なことだと思います。
私からも、
「資本主義であることが良いことか悪いことはさておいて、人類はしばらくこのやり方でいくしかない。
だとすれば、高校生のうちに、『商売って面白いな!』という実感を得ることができれば、それは将来の幸せにとって大きいことだ」
というようなことを生意気に申し上げました。
実践的な授業になることで、商売を面白いと感じる学生が増えたらいいな、と思います。
実際のところ、エマリコに入社してきてくれるスタッフについても、『商売って面白い!』と思えるかどうかが、日々のやりがいに大きく関わっているように感じています。
私自身、中学校・高校の学園祭では、もっぱら店屋ものを企画していました。
それがとても楽しかった。
日本社会は、士農工商という言葉があって、商売人を下に見ることが多いかもしれません。少なくともこれまではそうでした。
ただ、近年では、ビジネスを通して社会をよりよくしていこうという社会起業家(私もそのはしくれと思っています)も増えてきているので、若い人の感覚では、商売を立ち上げることはむしろ社会に貢献することという意識が広がっているように感じます。
もう少し突っ込んだことを言うと、おじさん社会は「パーパス経営を考えよう!」なぞと騒いでいますが、今さらどうした?ってなもんです。私のまわりの若者はみんなパーパスを考えてから起業しています。
ところで話が逸れるようですが、私は「経営学」が好きです。
経営学と経済学の違いを分からずに大学を受けようとする若者がいたら、めっちゃその違いを説いています。(まあ、五月蠅い大人でしょうね。)
経営学は、ざっくりと言うと、どうやって組織を動かしていくか、という学問です。
経済学は、数字・数式の観点から、どのような社会にしていくべきか、という学問です。
この二つの間には、社会全体が対象か、一個の組織が対象かという点も違いますが、根本の考えにも違いがあると思っています。
それは性善説か性悪説か、です。
経済学は、個々の人間が利己的に動くと考えます。単純化しないとモデルが作れないからです。
しかし、経営学は違います。
経営学はHOWを考える学問です。
戦略の理論にしろ、会計の理論にしろ、人材育成の理論にしろ、どうやって組織を動かしていくかという経営学のノウハウは、誰でも使うことができます。
つまり、麻薬の密売組織でも、暴力団でも、使うことができます。実際のところ使っているでしょう。
その意味で、経営学は、悪い人もいるかもしれないけど、総体的に見れば、人間はいいやつが多い。
そういう社会観に基づいています。
そうでないと研究していられません。悪の組織にも加担しているのですから。
だから、経営学の前提は性善説。
これが私が経営学を好きな理由です。
高校で学ぶ商業も同様です。
商売というものは売上が立っているかぎり、誰かの役に立っている。基本的にそういう前提があります。
ちなみに、税金や寄付で行われている事業は、誰かの役に立っているかどうかを証明するのが難しいです。少なくとも自明ではないです。
しかも商売は、なかば自動的に、コスト低くそれを行おうとします。「それ」とは、誰か他人にとって役に立つこと、です。
他人にとって役に立つことを、よりコスト低く実現しようと自動的にしてしまう。
なんと素晴らしいことでしょうか。社会の資源は有限なのですから。
士農工商の因習を離れ、商売やビジネスの有用さを日本社会はもっと認識すべきです。
先日、私の大学時代のゼミの恩師である伊丹敬之先生が、文化功労者として国から表彰されました。
たいへんめでたい話なのですが、なによりエポックメイキングなことに、経営学の分野からは初めての文化功労者なのだということです。
経営学にきちんと光が当たることに大きな喜びを感じます。
とまあ、経営学についてツラツラと書いてきましたが、振り返れば自分の経営は順風満帆とはいえない。
私は経営学が好きなので、経営学科卒であることを誇りに思いたいです。しかし、そんな体たらくでは、誇りに思うことができないわけで。
ということで、いま、あらためて経営学を学び直ししているところです。
もうちょっと進化していきますよ。乞うご期待。
株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。