株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2023.12.10

食、夜、出会い。街を官能化すべし

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

国立に住んでいる人であれば、「スナック水中」が注目されていることは知っているでしょう。

谷保駅前にある「スナック水中」は、一橋大を卒業した坂根千里さんが、就職を経ずに新卒で、古くからあるスナックを事業承継して昨年に開業しました。
その客層は、まさしく老若男女。カウンターの顔ぶれを眺めれば、高齢の男性が行くところというスナックの常識が覆っていることは明らかです。

ここで「スナック水中」の魅力を、私の拙文で表現するような野暮なことはしません。
ただ、人と人が出会い、ともに同じ空間で楽しむ。それは世代に関係なく強いニーズなのだということ、いや、ニーズという言葉では弱く、人間にとって必要不可欠な営みであること、そういうことを確認させてくれます。
人間は、楽しいときも、傷ついたときも、誰かと一緒にいたい。

ときに、5年ほど前の新書ですが、三浦展さんが書いた『東京郊外の生存競争が始まった!~静かな住宅地から仕事と娯楽のある都市へ』がすごく印象的でした。

豊富なケーススタディとともに、街の生存競争のなかで重要なキーワードとして、以下のような言葉が並びます。

・郊外を官能都市化せよ!
・住みたい街は食べたい街
・夜の楽しみがある郊外
・夜の娯楽は人間の根源的欲求
・住宅地に個性的な街が醸成されていく

逆にいえば、”官能的”な観点から特徴を出せないただの閑静な住宅街は衰退すると著者は主張します。
『繁華街と同じ楽しさではないが、五感で楽しめる楽しさがなくてはならない。』

この考え方は、エマリコくにたちが重視していることとも重なりますね。
”アナログな場の笑顔””背景流通業”、こういうことは、まさしく利便性とか閑静とかと異なる方向性です。
言いかえれば、「余計なこと」が街には必要なのだと思います。

同書のなかで、とても興味深い提案がありました。
多摩ニュータウンの真ん中にある多摩センター駅、その駅前の通りに、週末ごとに屋台が出るようにしたらいいというものです。
思わず、それは素晴らしい!とヒザを打ってしまいました。
五感的にいえば無味乾燥な多摩センターですが、ここに定期的な屋台イベントができたら、ぜんぜん違う街に変貌することでしょう!これは間違いない。
エマリコくにたちは、多摩市でアンテナショップの運営をしています。なので、この提案は他人事ではないのです。

ちなみに、今月、アンテナショップのスタッフで忘年会をやろうということでお店を探したのですが、地元ならではの楽しいお店を探すのはなかなか難しかったです。
チェーンの居酒屋がダメだというつもりはないのです。ただ、三浦展さんによれば、そういう街はこれからちょっとキビしい。

このブログで再三触れていることですが、Amazonはますます便利になり、スーパーは無人化する。
それもまた素晴らしいことだと思います。

一方で、その逆サイドにもまたニーズが確実に生まれてくるでしょう。
アナログのサイド。人間のぬくもりを感じるサイド。
エマリコくにたちは、このサイドに一点張りしていきます。

どちらのサイドにも目配りのできる街が、今後も生き残っていけるのです。

 

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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