株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2019.09.29

まちづくりとまちおこしのハザマ

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拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

地域の活性化を考えるときに、「まちおこし」という言葉と「まちづくり」という言葉がよく使われます。

どちらもこの分野にいると耳なじみのある言葉ですが、推察するに、どうも世の中の多くの人はこのどちらか一方しか使いません。
一番多いパターンは、特段の意識もせずに、どちらかだけを使っているというものでしょう。
そして、ある一定の層は、意識的にどちらか一方を使います。逆にいえば、なんとなく片方を嫌っている、好きではないという感じではないでしょうか。

「まちおこし」は率直なところ古い感じです。その古さを無意識的に感じて「まちづくり」を使う人もいるでしょう。その点、地方創生と言う方が最近っぽいです。まあ、私は地方創生という言葉は使いませんが。(その理由は後述します。)
「まちづくり」は、「まちおこし」に比べて総合的な感じです。
どう総合的かといえば、経済的なことだけでなくてもっと色々なこと、たとえば多様性とか生きがいとか伝統文化とか、そういうお金に換算できないものも「活性化」していこうということです。
豊かさとは何か。経済だけではないだろう。そういう価値観の変化とつながりがあるのは明らかですね。
つまり、まちづくりの方がより新しい概念です。

で、私は意識的に両方を使います。場面によって使い分けるのですね。

でも、「まちおこし」と言うことの方が多いです。
「まちづくり」もいい言葉だと思っています。何を隠そう、一橋大学にその名も「まちづくり」という講義が開始されたとき、私はその1期生でした。(ちなみにどの学部でも履修できる共通科目でした。)

ということで、まちづくりという言葉も好きなのに、あえて「まちおこし」をよく使うのはなぜか。

それは目的がより明確だからです。
「まちおこし」は、よくもわるくも、経済的な活性化、地域内のお金の循環が元気になることを目指しています。
金銭に換算できない価値は重要ですけども、そうはいっても経済が解決できることって街にはたくさんあります。年金や健康保険といった社会保障もそれをもたらすのは経済です。芸術を振興できるかどうかも、結局のところ経済次第で状況は変わります。
モチのロン、経済が全てを解決すると言いたいのではありません。
しかし、ここがポイントですが、まちづくりの議論の場面では、経済的側面をあまりに無視する場合が多いと感じることがあります。なので、私はあえて「まちおこし」という言葉を使うことが多くなります。

「まちづくり」は、非金銭的な豊かさを内包している点で、「まちおこし」の上位概念とすら言えます。
しかし、であるがゆえに、曖昧さがもう爆発しまくっていて、輪郭がモヤモヤしたものとなっています。
「まちづくりのために●●という施策が必要だ」といえばなんでも素晴らしいことのように感じます。

一方で、「まちおこしのために●●という施策が必要だ」と言われれば、目的は経済の活性化ですから、その施策がベストプラクティスなのかを検証することができます。すなわち、まちおこしの施策は検証可能で、まちづくりの施策は検証不可能なのです。

私自身は街の非金銭面での豊かさもとても大事で、経済が最優先だとは考えていません。(でなければこんな会社は起業しませんから。)
でも、経済を忘れている人と、経済を盛り上げようとしている人、この分断が地域の中にあるとすればたいへん残念で勿体ないことだなと思います。

で、余談で「地方創生」ですけども、地方という言葉は、主体になりにくい。誰を指すのかわからない。ということで、これはあくまで国家政策上の言葉と理解しています。
いいかえると、市民の心をワッセワッセと担いで団結させていくことのできない言葉です。なので現場の我々が使う意味はあまりないわけです。

その一方で、まちづくりもまちおこしも出てくる「まち」という言葉、これは主体になりえます。主語になります。そこに住んでいる人たちのコミュニティ、これがまちです。まちおこしとは、「街の人の、街の人による、街の人のための興し(=経済活性化)」です。

「まちづくり」の方が新しい概念であるがゆえに、いいイメージっぽいんですけど(政治家の方は新しさに敏感ですね)、でも経済的活性化を主たる目的にしている場合に、「まちづくり」とぼかすことはありません。
そこはヒヨらないで!

正々堂々と、目指すは「まちおこし」、そう言いいましょう。
Let’sまちおこし!

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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