株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2019.10.10

農業と飲食業は似た者同士?

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

うちの会社では、いろんな曲折もあって野菜小売店と飲食店の両方を同じくらいの規模でやっています。
ぜんぜん違う仕事ですが、似てるなと思う時もあります。

飲食業はホスピタリティ産業と呼ばれる業界の一角ですが、この産業は日本のレベルはやっぱり高いね、と言われることが多いです。無理矢理にひとことで言えば「おもなしの精神がある」ってことですね。まあ、実際のところいろんな理由があると思うので、精神論だけにするのは違和感も残りますが。

そして、おもてなしの精神が過剰であるから、かえって産業の生産性が低下しているという議論も、この業界にいると少なく見積もっても100回は見聞きしたことがあります。

これ、前々回のブログで、「耕作放棄地を耕すとマクロ的には農産物の価格が下がる」と書いたのと同じ理屈で、「みんながよいサービスをするとよいサービスの価格が下がる」ということになっているわけです。
あるいは、オーガニックの農産物はそれなりに手間がかかるので、それなりの価格でなくてはいけません。でも、それが転嫁できていない状況もある。
同様に、素晴らしいおもてなしはそれなりの価格でなくてはいけませんが、そうなっていないという点でとっても似ています。

そこは消費者の意識が変わらないといけないんだ、という議論も多いわけですが、どうでしょうか、それはものすごく長い時間が必要であり、今日明日を生きる中小事業者にとっては解決策として除外せざるをえないと思います。

あと、飲食店と野菜の小売とを両方やっているなかでは、日本のサービスパーソンが「やりすぎ」になるということと、日本の農家さんがものすごく形の綺麗な農産物に対して強い矜持を持っているということが何となく似ている気がしてなりません。
日本には、ほんとうに見た目に惚れ惚れする野菜、美人な野菜が多いです。

私個人は、「国民性」という言葉でまとめてしまうと解決策が出てこないので(国民性を消すとその国の美点も消えてしまうので)、国民性帰結論は好きではありません。
しかし、今日もSCOPに日本語をしゃべらない英国人のお客様が来て、すごくフレンドリーに応対している当社の若いスタッフ山川を見て、やっぱり国民性なのかなと思ってしまいます。ちなみに山川は新潟の出身です(それは関係ないか?)。

でまあ、価格が安いと悪い事ばかりかといえばそうではない。国民全体は相対的に安い価格でそのメリットを教授できているわけです。その分、この国の幸福は増えている。
こんなことを言っても、文字通りなんの腹の足しにもならないわけですが……。

とまれ、ホスピタリティ産業にしても農業にしても、それは誇りに思っていいと思います。稼ぐという観点ではまだまだ幼い産業かもしれませんが、総体としてとっても社会貢献度が高い産業であり、携わっていることに幸せを感じています。

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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