株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2024.04.14

東京産の野菜が美味しい12個のワケ

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

今回のブログは、シンプルな内容です。
なぜ私たちが扱っている野菜、つまり東京産の野菜が美味しいのか、を12個の理由で解説していきたいと思います。

都市農業だからというところと、地産地消だからというところが、ごちゃっと混ざっていますが、そのへんはご了承ください。また、農業経営はケースバイケースですから、あくまで平均を取った場合の話、あえて一般化した場合の話だということもご理解いただければと思います。
それではいってみましょう~!

(1)新鮮
なんといっても、新鮮であること。中間の流通が短いこと。
トウモロコシやアスパラガスなど、いかにも鮮度が大事なものもそうですが、実はピーマンや春菊なども、採れたてのものは味が違うんですね。

(2)樹上完熟
野菜は草本(幹が木質ではない)ですけれど、それでも「樹上」という言い方をします。
地産地消では、完全に熟すまで待って収穫します。これを樹上完熟と言います。
大産地ではどうしても若いうちに採ることになります。そうすると味が一段階落ちてしまいます。
トマトやイチゴがこれにあたります。

(3)進取の精神・研究熱心
東京都内の農家さんとお付き合いしていて驚かされるのは、とても研究熱心なことです。新しい品種や栽培方法をどんどん試しています。
その理由としては、後述するように消費者が近いこともありますが、そもそも東京で農業を続けよう、というのですから、農業に対して高いモチベーションを持っている農家さんしか残っていないのです
また、兼業が多いというのはデメリットだと思われがちですが、美味しいものを作ろうというモチベーションを前提にするならば、試行錯誤するリスクを負えるということを意味します。
そうした結果、より美味しいものを作ることができるわけです。

(4)味重視の品種選択&作型選択
これは大産地と比べたときの話です。
大産地では、安定的に栽培できることや重量が出ることが重視されることがあります(ケースバイケースで、それがすべてではありませんが)。
品種というのは、たとえばキャベツひとつとっても山ほどあります。
そういう中から何を選ぶのか?
大産地では耐病性が重視されるかもしれないです。あるいは重量が出やすいものを選ぶかもしれないです。
しかし、東京では、消費者と日々向き合っていますから、相対的に味重視になります。(ありていに言えば、農家さんだって褒められたいのです。)
国立市の中屋農園は、トウモコロシの品種に「ピクニックコーン」を選んでいますが、背が高いので倒伏リスクが高く、実は小ぶりです。しかし、その味わいに魅せられる人が続出しています。

作型(栽培時期)についても、同じことが言えます。
典型的にはジャガイモです。秋に採れるジャガイモは、夏収穫に比べて圧倒的に収量が落ちます。なので、大産地では夏収穫の作型です。多摩エリアでも基本は夏収穫なのですが、一部に味を重視して秋収穫、通称「秋じゃが」(品種は出島など)を作る農家さんがいます。その味はまったく別物です。

(5)ないときはない!
東京で加温ハウスで作られている作物は、トマトやイチゴなどごく一部です。ないときはない、という割り切りがあります。露地か、無加温のハウスで大部分の野菜は作られます。
つまり、味が最高潮になる旬の時期にだけ出荷されています。なので、スーパーなどで流通しているものよりも、相対的に美味しく感じるのです。

(6)畑が狭い
畑が狭いということは、目が行き届く、ということです。何ヘクタールもあったら、すべての株を見るわけにはいきません。1枚の畑であっても、こっちの端と向こうの端で環境は微妙に異なります。
たとえば、今が旬のセロリですが、職人的な感覚でもって水分量を微妙に調整することが大事です。そうした調整できるのも、畑の面積がある程度限られているからです。

あるいは、収穫するときも、厳密には生育状況は株ごとに異なるわけですが、畑が広いと同時に収穫しないとやってられません。そうすると一番美味しいタイミングでないものも混ざってしまいます。
しかし、多摩エリアの畑では、一株一株、収穫時期を見極めて収穫している風景がごく普通に見られます。

(7)水がある、水はけがいい、土がいい
これはちょっと意外な話かもしませんね、東京は農業に向いている、と言われたら。
しかし、実は、多摩エリアは水はけや土といった条件が相対的によいです
多摩川の近くでは用水があって水の適度な調整が効きます。(地方に行けば水道や井戸のない畑は多いです。)かといって、水が多すぎる湿田でもないのです。
また、崖線上の玉川上水沿いは、水はけは畑作向きです。養分的にはもともと農業に不向きでしたが、長年をかけて落ち葉や動物性たい肥を入れて改良してきています
国分寺市のこくベジは「300年野菜」をうたっており、昔から江戸の市民を支えてきたわけですが、その積み重ねはダテじゃないと思います。こうした条件は、明治維新以降に開拓された地方の生産地と比べて優れている場合が多いと思います。

(8)自分の子どもも食べる!
東京の農家は、基本、地産地消型です。つまるところは、自分の子どもや地元の友人がその野菜を食べる、ということです。
多摩エリアでは、学校給食を主要販路にしている農家は多いです。そうしたときに、自分の子どもが通う学校の給食に使われる野菜に愛情を注がないわけがないですよね。

(9)競合のない珍しい品種を作る
これは、他の産地と比較して美味しいかどうかという話ではありませんが、地産地消型の農業は周囲の農家がみんなライバルです。そうすると、周囲の農家と違う珍しい品種を作ろう、という農家さんが出てきます。
典型的には、江戸東京野菜や西洋野菜です。
そうした珍しい野菜がバラエティに富んだ食生活を助けていて、結果として、「地元野菜は美味しい」という印象を強めていると考えられます。

(10)自分の名前が付いている!
東京では、あまり「共同出荷」というスタイルがありません。以前は一般的だったのですが。
直売所に並べようが、地元の飲食店に納入しようが、学校給食に出そうが、商品には自分の名前が常に付いてまわります。地産地消では、生産者は自分の名前を隠すことができません。
「顔が見える」というのは、消費者にとっては安心・安全の象徴ですが、生産者にとっては責任を意味します。

(11)自分の性格にあった品種、作型
共同出荷というスタイルでないということは、自分で作りたい品種や作型を選べるということです。
農業に限らず、どんな仕事でもそうですが、仕事のスタイルと自分の性格が合致している方が成果が出やすいです。
農家さんも人間なので、性格は十人十色です。
たとえば、ガガッと一気に仕事を片付けるのが好きな人もいれば、日々ちょっとずつ地道な作業を積み重ねていくのが好きな人もいます。ブルーベリーは、酷暑の時期に収穫時期を迎え、その時はめちゃめちゃ頑張らなければなりません。しかし、それ以外の季節はさほど忙しくありません。
このように、自分の性格や生活スタイルにあった品種や作型を選べる。これも農産物の品質を高めることにつながっているのではないかと私は考えています。

(12)心ある流通屋の存在
最後の理由です。
これは自画自賛的な話ですが。
東京には志を持って流通を担う団体があります。
私たちエマリコくにたちだけではなく、いくつもの民間企業、それからJAやNPOも含めてです。

きちんとした流通があっての、野菜の美味しさです。
流通過程で品質を保つことはもちろん、調理方法・保存方法をアドバイスする、農家さんの工夫を伝えるなど、食卓の美味しさを作るうえで流通が担うべき役割はたくさんあります

農家さんが責任感を持って野菜を栽培しているのと同じように、責任ある仕事をする流通屋がいる。
このことも、東京農業の特徴と言っていいはずだ。と、私は思っています。

ということで、以上、東京産の野菜が美味しい理由でした。
いかがだったでしょうか?

12個も列挙しましたけれど、他の理由もまだまだあると思います。思いついたらぜひ教えてくださいね。

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

Photo

株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

PageTop