株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2020.03.24

プロフェッショナルが育つ土壌

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

昨年から、WEBメディア『マイナビ農業』において直売所の運営ノウハウを連載しています。
その連載タイトルが「直売所プロフェッショナル」というのですが、その由来を書きたいと思います。

この「直売所プロフェッショナル」というのタイトルは、三枝匡さんが書いた経営についての著書『戦略プロフェッショナル』(日経ビジネス人文庫)のオマージュです。
三枝さんは、ミスミを率いた名経営者であり、またビジネスについての著作も多数ある方です。そして、エマリコくにたちの共同経営者で副社長の渋谷はこのミスミ出身です。

三枝さんの著作、またミスミを貫く経営哲学として大事な言葉があります。
「創って、作って、売る」がそれです。

ふつう大きな会社では、商品の開発部門と製造部門、営業部門は異なるものとして組織設計されています。
しかし、ミスミではそうではなく、小さなチームが「商品を企画し(創って)、製作をし(作って)、そして販売する(売る)」まで行います。この商売のフローを、現場のチームが一気通貫に行うことで、責任感と創意工夫が生まれるのです。
ちなみに、大きな裁量がそれぞれのチームに与えられていることがポイントです。

この哲学はエマリコの経営にも活きています。
エマリコの直売所は、「商品探索」から「仕入れ」、「販売」という業務があるわけですが、当社ではこれらの作業をなるべく店長が自分で行うようにしています。そして、もちろん店舗ごとに月次決算があります。
そうすることで、責任感が生まれ、創意工夫を行うモチベーションが高まります。

そして、エマリコには、ミスミ流のポイントである現場の裁量についても裏付けがあります。
創業以来、組織づくりのモットーとして3つの言葉、「自由」「信頼」「情報共有」を掲げています。
このうち「自由」とは、現場の裁量のことであり、創業時からそれをできるだけ大きくするように意識して経営してきたつもりです。
その結果、当社のお店たちはまったく異なる顔を持つお店に育ってしまいました(笑)。

さて、月2回、私と渋谷で書いている連載「直売所プロフェッショナル」は、いまちょうど面白いところに差し掛かっています。
直売所は委託式(消化仕入)になっていることが多いのですが、今月から来月にかけて、その弱点を指摘しています(本ブログ執筆時点では未公開記事あり)。
そのなかの最大のポイントは、委託式はプロフェッショナルが育ちにくい、ということです。
委託式なので、「商品探索」や「仕入れ」といった途中のプロセスがなく、やるべきことは「売る」だけです。しかも、現場に権限も委譲されていないことも多いです。ミスミ流の真逆です。したがって、プロフェッショナル、言いかえれば責任感と創意工夫の意欲が育ちにくいわけです。
(育たないわけではないです、念のため。その点についてよりケアが必要だということです。)

もっとも委託式をやめて買取り式にすればいいかといえば、それはそれでリスクも手間もかなり大きいので、オススメかと言われれば、正直ケースバイケースです。
ただひとつ言えることは、直売所業界全体の規模はかなりのものになっているのですが、規模に比してプロが少ない業界だということです。
直売所で働いていることを誇りに思い、その専門性を伸ばしていく人材を増やすことがこの業界には必要ではないでしょうか。
直売所は地域の農業と市民をつなぐ結節点として、重要な役割を担えるポテンシャルがあります。直売所業界がさらに発展していけるかどうかが、今後の日本のまちづくりを変えると言っても過言ではないと考えています。

『マイナビ農業』:「直売所プロフェッショナル」はコチラ

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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