株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2022.02.13

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし

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拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

プロ野球もキャンプイン。
2月11日は野村克也監督の命日ということで、スワローズナインが黙とうをささげていました。
(東京ヤクルトスワローズは、今年もきっと優勝しますよ~!)

野村監督の名言は多々ありますが、有名なもののひとつが、
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」
ですね。

これは商売に通じるところもありますが、食べ物に通じるところもあります。

ときに、私はあまり料理は得意な方ではないのですが、たまに料理をしてみると思いのほか「美味しい!」となることがあります(たまに、です)。その美味しさたるや、自分が天才なんじゃないかと勘違いするほどです(笑)。

しかし、調子の乗って翌日にろくにレシピ本も見ずに料理すると、「あれえ?」ってことに……。

まさに、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」。
美味しいものができた理由は不思議である一方、美味しくなかったことにはなんの不思議もありません。(単なる勉強不足であり準備不足。)

エマリコくにたちは、多くの農家や地元の食品工場とお取引しています。
そうした、食べ物を生産するプロフェッショナルは、いつも美味しいものを安定的に届けてくれているわけですが、そのための準備がしっかりなされているからこそ可能なわけです。
私の料理が美味しいか美味しくないかは、私の妻以外の人にとってはどうでもいいことですが、それを生業としているからには、美味しくないという「負け」は許されない。
ちょっとした品質不良であっても、悪評が広まるのは早いですからね。美味しくないという事態を極力排除する、そういう努力が必要とされます。

逆に言えば、新しく食べ物作りに参入する人も、「美味しい!」というものをたまたま作ることができて、一時的に人気が出ることがあります。
「勝ちに不思議の勝ちあり」、ですね。
しかし、何年も安定した品質でひたすらに提供し続けることは、並大抵のプロフェッショナリズムではできません。

そういう意味で、何代も続いている農家さんやメーカーさんには、私たちは畏敬の念を感じるわけです。(もちろん、新たに起業した方も応援していますが。)

先日、スタッフと連れ立って、青梅市で3代続く納豆メーカー「菅谷食品」を訪問してきました。

連綿と美味しい納豆を追求するなかで生まれてきた言葉が、パンフレットのタイトルになっています。

「納豆菌と話しながら。」

冗談ではなく、職人さんは日々、納豆菌と会話しているのだそうです。

「納豆菌は美味しい納豆になるために納豆職人に話し掛けてきます。納豆造りは納豆菌と職人が互いにわかり合うところから始まります。」

こんなセリフを、てらいもなく言える、そんなプロフェッショナリズムに会えることに、私はいたく感銘を受けます。エマリコの商売が面白くてたまらないと思う瞬間です。

菅谷食品では、昔ながらの納豆づくりを残していくために、「せいろ蒸し」と「石室炭火造り」を実践しています。
石室での炭火造りでは、遠赤外線が大豆を中側から温めるために、納豆菌の働きを助けるのだそうです。

ちなみに、納豆菌は、たった一晩で、大豆を、消化もいい、健康にもいい、味もいい、そんなものに変えてしまうスーパーな生き物。
同じ発酵食品でも、たとえば、醬油は数カ月もかかりますし、発酵期間が比較的短いお酒であるボージョレ・ヌーヴォですら数日間はかかります。
そういう観点からすると、納豆の品質は、たった一晩だけでその勝ち負けが決まってしまいます。
しかも注文は連続して入ってきますから、毎日新しい勝負をする。納豆屋さんというのはそういう仕事なのです。

発酵を進める室のなかでは、場所や高さによって温度が違います。納豆は発酵させる前からすでにパックに入っていて、室では数十パックずつ浅いプラスチックケースに入れて積んでおくのですが、ケースを高く積んで室に入れると、上と中段と下段では温度が微妙に変わってくる。
なので、前日に室に入れた納豆を翌朝に味見をしながら、室のなかに置いておく時間をケースによって微妙に調整するとのことです。
「そこまでやるメーカーは少ないんじゃないかな」とおっしゃっていました。

菅谷食品さんとお話をしていると、そんな毎日の勝負に対し、ものすごく真剣に向き合っていることが伝わってきます。
それは、勝つというよりも、負けるのは許さない、という姿勢のように見えます。自分が許容できる品質をぜったいに下回ってはいけないという姿勢です。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」、だからでしょう。
そして、手を抜いてしまったら納豆菌に失礼だから、なのだろうと思います。

こうした生産者の皆さんの姿勢には、尊敬の念を抱かずにはいられませんし、同時に小売業者として身が引き締まる思いがします。
いくら生産現場が頑張っても、私たち小売りをする者たちが手を抜いてしまったら、せっかくの勝ちも負けになってしまいますから

そんなことの確認のためにも、生産現場にスタッフみんなで訪れるのは大事なことです。

とまれ、ぜひ菅谷食品の納豆を、弊社店頭でお買い求めくださいませ!
Craft! KUNITA-CHIKAにも納豆を使用したメニューがありますよ。

菅谷食品公式サイト↓
https://www.sugaya.co.jp/

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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