株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2022.06.17

めくるめく、野菜の品種の世界

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

昨日は、赤坂見附の東京農村で、「東京トマトの食べ比べ!(農家と食べようin東京農村 #03)」を開催しました。
府中の若手トマト農家小勝正太郎さんをお招きして、トマト栽培の工夫を聞きながら、トマト料理をコース仕立ててで食べるという内容です。
小勝正太郎さんは、トマトにとって光合成が大事であること、そのために温度や湿度もきっちりと管理していること。そして、美味しいトマトができあがるまでには、病気や天候など、様々なハードルがあるという熱く語ってくれました。

ところで、このイベントの冒頭、5つのトマトの食べ比べをやってみました。

東京ではトマトを栽培する農家さんが増加傾向にありまして、どの農家さんも栽培方法に工夫を重ねています。その方法によって味わいも変わってきます。
そして、栽培方法のほかにもうひとつ、味わいを決める要素があります。

品種です。

ここに並んだトマトも、見た目はどれも真っ赤で美味しそうですが、「麗夏」、「サンロード」、「桃太郎」が2つ、「りんか」と品種が異なります。
桃太郎も2つと書きましたが、厳密には違う品種です。
桃太郎というグループに入る品種は25もあるらしい……!

そういうなかで、農家さんは自分のスタイルに合う品種、あるいは他の農家さんと差別化できる品種を選択して栽培しています。
(このあと、それぞれの品種の特徴を書き始めたのですが、やめました。長すぎちゃうので。トマトの品種の話は、また別の機会に。)

品種選択というのはとても重要です。
美味しさということもありますし、農業経営を左右しかねません。

小勝さんが語っていたように、作物には色々な病気のリスクがあります。それを防ぐために病気に強い品種を選ぶ必要もあります。

意外なところでは、作物の背丈も重要です。
背丈が高いと強風に弱くなるからです。
まさに今が旬のトウモロコシもいろんな種類が出ていますが、なかには「美味しいんだけど、背丈が高いのが玉にキズ」ということで敬遠されがちな品種もあったりします。

収量、とくに重量や歩留まり、という要素もあります。
地方で大量に生産する場合には重量をとくに優先することも多いです。基本的にキロ単位で取引されるからです。

以前、『マイナビ農業』に書いた話なのですが、モスバーガーが群馬の野菜くらぶと取引したときに、もっと柔らかいレタスにしてほしいと要望したということです。
重量を重視してきた地域だったので、品種選定の基準もそのようになっていたのだと思われます。

★「まずいバーガー」試食でベクトル合わせ モス流・農家と二人三脚する方法【大企業は農業を変えるか?第2回】

https://agri.mynavi.jp/2021_10_27_174650/

保存性とか、収穫タイミング。そういうことも品種選定の理由となります。
このことは、『マイナビ農業』に寄稿したJAなめがたしおさいの事例からも分かります。

焼き芋用のサツマイモを売りまくっているJAなめがたしおさいは、紅優甘(べにゆうか)、紅まさり、紅こがねの3つの品種をリレーしています。
サツマイモは収穫してからすぐに出荷するのではなく、熟成させて美味しくするのですが、熟成すればするほどよいというわけでもなく、適切な出荷タイミングがあります。
なので、収穫時期が異なる3つの品種をリレーすることで、通年で美味しいサツマイモを提供しているのです。

★国内でも、海外でも! 「焼き芋」を売りまくる先進的JAの戦略
https://agri.mynavi.jp/2021_08_20_167384/

おっと。これまでの『マイナビ農業』の拙コラムの振り返りみたいな感じになってきてしまいした。

とにもかくにも、どの品種を選ぶのか?その問いにも、いろんな基準があって、とっても奥深いのです。
あっちを立てれば、こっちが立たず。品種それぞれの長所と短所
そのバランスを考えて慎重に選ぶことは、農業経営のキホンのキです。

そんなこともぜひ知っていただきたいので、これからも色々なイベントをやっていきたいと思います。

※※※旬の野菜を楽しむ!宅配型食育プログラム『農くる!』スタートします※※※

最後にお知らせです。
親子向け収穫体験イベント『農いく!』はおかげさまで、大半の開催回で満員御礼となるようになりました。
こんどは、より忙しい親子の方向けに、宅配型食育プログラムを用意いたしました。
その名も『農くる!』!!
今村結衣さん監修の子どもも楽しめるレシピや農家さんの紹介カードが付いてくるなど、楽しいプログラムです。


詳細は以下から。
【農くる!2022 SummerPlan】
https://nouiku-tokyo.com/event/noukuru_2022summer/

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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