株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2020.03.06

その恩義、忘れがたし

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

「恩義」ってタイトルに入れましたけど、古めかしいですね。あまり今、使わないですよね。
でも、ちょっとそういう言葉を思い出すタイミングがあったのでタイトルにしてみました。

というのも、国立市には空き店舗活用の一環で、学生が中心となり市民と一緒に経営するカフェがあって、かれこれ16年も続いています。(富士見台地域の「cafeここたの」。https://kokotanochan104.jimdofree.com/ 私は学生時代に立ち上げに関わったのですが、今はノータッチです。)
で、現在の学生のあいだで「理念テスト」(だったかな?)なるものがあるというのです。

「理念テスト、なんだそれ?」
ということで、どんなものか見せてもらったのですが、そのなかに、「空き店舗の改装費用をどうねん出したか」「不足する運転資金をどうしたか」という問いがありました。
いやはや、わがサークルの後輩ながら、感心しました。世代が代わっても、往年の恩を忘れないようになっている。
その方法がテストというのが、学生らしいっちゃらしいんですが。

で、ちなみに答えは、
「空き店舗の改装費用をどうねん出したか」⇒東京都、国立市、商店街などの地元、3分の1ずつの補助金
「不足する運転資金をどうしたか」⇒商店会会長の内藤哲文さんからの個人的な貸し付け(現在、内藤さんは国立市商工会の会長)

立ち上げたときに使った補助金をどこからもらったのか。それを16年間も語り継ぐ事業なんて、多くありませんよ。少なくとも、まちづくり業界においては。
まして補助率が「何分の何」だったかなんて、まったく覚えてない団体が多いのではないでしょうか?
補助金のことを恩義だとは少しも思ってないのですね。
さらにいえば、補助金だから失敗してもいいや、くらいに考えて受給する団体すらあると思います。

その点、商店会の内藤さんが学生に貸し付けをしたというのは、賢人の一手というか。
学生はカフェの経営を頑張って、毎月、返済していかなくてはいけない。
飲食店未経験の学生がやるカフェにお金を貸すなんて、リスク度合いがパチンコといい勝負くらいかもしれませんけど、そのおかげで「頑張らざるをえなくなった」。
その結果として、16年間続くカフェになったわけです。
もちろんそのときの借入金は完済済みです。

世のなか、まちづくり事業は色々ありますけど、補助金だけだったら、「継続できませんでした。ごめんなさい」が許される。道義的にどうかは別にして。
それが借り入れだと、返済原資だけは最低でも稼がなくてはいけないわけです。

そして元本を完済したときには、稼ぐ力、つまり継続してその事業を行っていく力が付いているわけです。元本を返済できるということは、減価償却控除前で利益が出ている、ということですから。
内藤さん、天才だな。

ときに、わが社、エマリコくにたちのの資金調達についてですけども、多くの株主さんがいる会社です。
上場を目指していないのにもかかわらず、出資してくれています。
ありがたすぎることです!

で、この恩義は、株主名簿という形で、長く残っていきます。
つまりは、出資したことでエマリコの経営に関与する権利を持っています。
この株主の権利によって、エマリコくにたちが地域にとってよいことを行っているかどうかをチェックすることができます。言いかえれば、わが社の経営陣が恩義(株主のみならず地域社会からの恩義)を忘れて私利私欲に走らないことを担保する仕組みと表現することもできます。

あれ、恩を返す相手なのに、なんだか、さらに株主に義務を押し付けているみたいですね。
まあ、いいかな?

そんな感じで、エマリコくにたちは今日も回っていて。
ちょっと偉そうなことをいえば、こうした株主さんとの関係は、ソーシャル・ベンチャーの一形態として新しいものだと思っています。

さて、恩に報いるために(将来は配当もするために)、今日も頑張ります!

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

Photo

株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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