株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2018.11.15

ブームと10年のあいだ

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

先日、日本フードサービス協会が主催の展示会「JFバイヤーズ商談会」に行ってまいりました。

大手食品メーカーの出展だけでなく、今回のテーマは「農業とのマッチング」ということで、地方のJAさんや大手農業法人、畜産の小さな組合まで多くの農業関係者がブースを出していらっしゃいました。

外食の業界団体が先頭に立って、農業との連携を考えていただいている。
時代がきているな、と思います。

ところで、TBSのドラマ『下町ロケット』(阿部寛主演)の第2シリーズが始まっています。
原作である池井戸潤の小説は、「社長とはなにか?」「リーダーとはなにか?」をつねに問いかけてくるので、私にとってはエンタテイメントというよりテキストみたいなものです。

それはさておき、『下町ロケット』の初回シリーズは、小さなメーカーがロケットの主要部品を開発するというストーリーでした。(といっても「佃製作所」は売上100億くらいあるらしいから、中小企業と言ってもかなり大きい方ですが。)
ところが、今回は、なんと農業機械の部品を開発するというストーリーになりそうなのです。

阿部寛が田んぼで田植えや稲刈りを手伝うという場面が、かなり重要なターニングポイントとして登場するのにとどまらず、ロケットを作っている超大手企業である帝国重工の重役までもが稲刈りをする。(しかもなぜかネクタイをしたまま……。)

そして帝国重工は衛星を活用して農業ビジネスに参入しよう!となるのです。

まさに、農業万歳!農業イエーイ!的な展開。

ことほど左様に、農業に注目が集まっている。注目していただいているのですね。

振り返れば、少し前にLOHASという言葉が流行りましたが、このころはマーケティング用語でいえば「イノベーター」や「アーリー・アダプター」といわれる層が農業とのリンクを求めていた時代だったのでしょう。
そこから10年くらいたち、「初期多数派(アーリー・マジョリティ)」が農業とのつながりを求めるようになってきている。そういうことなのかな、と思います。

これが単なるブームなのかどうかは、とっても判断の難しいところでして、ぜひこのブログを読んでいる農業関係者、あるいはマーケティングや経済に詳しい方の意見をいただきたいところです。

農業はどんなに頑張っても1年サイクルという産業です。
つまりPDCAが1年単位。

戦後50年で、農業の生産性は7倍になったんですが、他の産業は25倍ほどになったとどこかの本で読みました。
農業も発展してこなかったわけではない。「7倍」とだけ聞けばなかなかの数字です。
でも相対的に他の産業に遅れをとってきたわけです。

その要因はいろいろありますが、PDCAが1年単位ということも大きな要素です。
50年、つまり50回のPDCAサイクルで生産性が7倍になったとしたら、これはすごいことではないでしょうか?
本当に先人の努力のたまものです。

しかし、1年サイクルだと、他の産業と連携しようというときにスピード感が全然合わなくてうまくいかない。

某社「うちで作ったトマトソースがすごい人気で!材料のトマト増産してください!」
農家「ありがとうございます。来年、がんばります。」
某社「え……?(それまで設備を遊ばせとくわけにいかないんだよなあ。)」

(以下は桃バージョン)

某社「この桃、すごい人気ですよ!増産してください!」
農家「じゃあ、新しく苗木買うんで3年後ですね」
某社「え、そのころには僕は部署異動してますよ……」

時代が21世紀になっても春夏秋冬のスピード感は変えようがない、なので、お互いが歩み寄れるかというところに今回の農業フィーバーがブームで終わるかどうかがあるように思っています。

先日、Root Rootでの交流会でお話をしていただいた横浜市保土ヶ谷区の農家・刈部博之さんは、自分自身で品種を育成しているというとても珍しい農家です。そうしてオリジナルの野菜を栽培し、地域に多くのファンを生み出しています。(ふつうは種苗メーカーから種を買いますし、在来品種をやっている農家も少数いますが種取りはしても新しく品種を育成をしたりしません。)
(参考)
http://www.city.yokohama.lg.jp/kankyo/nousan/tisantisyo/hf-navigator/hf-navigator024.html

で、その品種の育成がやはり7年から10年くらいかかるとのこと。
種は1年に1回しか取れませんから。テストキッチンでのメニュー開発とはわけが違う。

この10年という月日と、農業への注目度の高まりの早急さと。

この時間的な溝がどうなっていくのかな……?

そして、その溝を埋めることも中間流通を担うエマリコくにたちの仕事だなあ。

さいきん、そんなことを考えています。

今日は奇しくもボージョレ・ヌーヴォの解禁日。
そう、ワインも農産物ですから、1年に1回しかありませんの。

(CM)↓本日、SEKIYAさんとコラボでパーティ開催!↓
http://www.sekiya.co.jp/pdf/party_20181115.pdf#zoom=70

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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