株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2017.11.26

育種、芸術、そして経営

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

新米の季節です。
(いや、ちょっと遅いですかね。国立産のお米もよろしくお願いします。)

北海道産の「ゆめぴりか」、とても人気が出ているそうです。
美味しいお米を作りたいという道民の長い長い「夢」。そしてアイヌ語で美しいという意味の「ぴりか」を合わせたブランドネームなのだそう。実際、ツヤが美しいお米です。

朝日新聞に載っていたのですが、このゆめぴりかという品種はいちどは「落第」したのだそうです。
最初の実験において、十分な収量が出なかった。
その後に敗者復活戦的なことがあり、北海道を代表するブランド米へと「昇進」を遂げました。
最初の交配から品種になるまでに11年もかかったということです。

育種は総合芸術のようなものだ、と記事にあります。
食味も高めたい、耐病性も高めたいとやっていくと、あちらを立てればこちらが立たず……。

ビジネスも同じようなところがあります。

たとえば、当社が展開している小型直売所は初期費用が少なく、売上予測が大きくは外れにくいが、粗利率は低い。飲食店事業はこの逆です。
理論上矛盾する2つのことを両立させるのは至難ですが、それをクリアできれば大きな飛躍が約束されています。
実際、多くの一流経営者が経営は芸術のようだと言っています。

机上のアイディアでは、矛盾を解決できるような設計図も作れることもあるわけですが、実際にやってみないことには分からない。
アイディアを発想する力だけでなく、忍耐力もまた必要とされます。

本当に、育種に似ています。

ゆめぴりかを開発した北海道の試験場では、毎年100ほどの交配パターンを試すのだそうです。

エマリコでも、前にこのブログでも触れたように、2018年度までは多くのことを試す期間と考えています。
もちろん、「どうせお試しだ」という心構えでは成功するものも成功しませんから、すべて全力でのチャレンジです。

新品種を作るのと同じように、失敗を恐れていては何も起きません。
経営と芸術の近似性の意味するところは、相矛盾することを成り立たせるという意味に加えて、おそらく多くの芸術家は失敗を恐れていない。つまりは、保守的な芸術などありえないのです。
それもまた経営が芸術に近いといわれる理由のひとつのような気がしています。

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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