株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2018.04.14

平成狸合戦はまだまだ続く

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

先日、映画監督の高畑勲さんが亡くなられたということです。

高畑勲さんといえば、スタジオジブリで多くの名作を生み出したことで知られていますが、私たち世代(30代)にとって印象深い作品は『火垂るの墓』よりも『平成狸合戦ぽんぽこ』ではないでしょうか。
コミカルさ、アニメとしての爽やかさを失わずに、それでいて緑を壊していく人間の負の面を描くという矛盾した目的を達成した作品でした。

『ぽんぽこ』は、多摩ニュータウンの開発にあたって、住む場所を追われてしまうタヌキたちが人間と戦うストーリーです。
徳島には「阿波狸合戦」という伝説があり、映画のモチーフとなったのだそう。作中では、多摩のタヌキに変身術を教えるために、遠く徳島から応援のタヌキが来ます。
ちなみに、キツネは既に人間側に寝返っている設定です。

作中には、昔はこんなだったんだろうなあ、というじつにのどかな、地方のド田舎とまったく変わらない風景も描かれています。私自身は農村に生まれたわけではないのに(かといってシティボーイでもない)、こういう風景にノスタルジックな感傷が沸き起こってくるのは不思議なことです。

しかし、エマリコくにたちの使命は、「まちなか農業を次世代につなぐ」。東京から緑を消さないように戦っているという意味で、映画のタヌキたちとは同志と言ってもよいでしょう。

同じスタジオジブリの作品で『耳をすませば』は、やはり多摩の聖跡桜ヶ丘が舞台とされていますが、これにも個人的に印象深いシーンがあります。それは、高台にある「地球屋」のテラスから平地を見下ろすシーンで、遠くに多摩川と思しき川が見えるのですが、川の手前はじつに広大な田畑が広がっているのです。
たぶん、その景色は今は見られないだろうと思います。この映画は95年公開で、そんなに大昔のことではないのですが……。
そう思うと、いたく感傷的な気分になるのです。(映画のストーリーとしてもちょうど感傷的なシーンであることも影響しているとは思います。)

高度経済成長を経て、多摩地域の緑はかなり消えてしまいました。それはやむを得ないものだったと思います。しかし、これから人口減少社会になっていくのですから、パラダイムシフトがまちがいなく必要でしょう。
タヌキたちと同じように、私たちも手を変え品を変え、この状況に抗っていこうではありませんか。
戦いはまだまだ続いているのです……!

『平成狸合戦ぽんぽこ』の終わりでは、タヌキたちは人間に化け、人間として人間社会に溶け込んで暮らすことになります。
ということは、多摩に住む人の何割かはタヌキなのかもしれません。
もしかして、エマリコくにたちで働いている稀有なスタッフたち、実はみんなタヌキだったりして……。

そういえば、私の起業パートナーで副社長・渋谷の出身地は徳島……!
彼は、東京の緑を守るためにはるばる徳島から来た、助っ人(=つまり伝説のタヌキ)なのかもしれません。

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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