社長のBLOG
拝啓 東京農業を応援いただいている皆様
『直売所プロフェッショナル』という連載をマイナビ農業で書いていることは、前にもご報告しました。
門外不出の直売所運営ノウハウを、小出しに売っております笑。
さて、最近の回で、こんなタイトルの記事を書きました。
「令和時代の街の価値は、直売所が決める!」
なかなか大げさなタイトルですが、荒唐無稽なことではないと思っています。
直売所という商売は、創業する前まではあまり気づいていなかったんですが、小売業における「特異点」にあります。
(特異点の原義は、ふつうの基準では導かれない解のこと。)
直売所は、当然ながら、多くの農家と知り合いです。
一方で、私自身は、商工会の理事であったり、商店会の会員でもあり、地元の創業支援団体の一員だったりします。
しかし、そうしたことは、農業者だったらなかなか叶わないことです。ぜったい無理ということではないですが。
街のなかでテナントを借りて営業しているから、地元の商工業との関わり合いができてきます。
ときおりケーキ屋さん「マロニエ」に地元の農家さんを紹介したりもしますが、「マロニエ」は商工会の先輩です。
まちづくりにおいて農商工連携の必要性が叫ばれて久しいですが、直売所はその仲介役として重要な役割を果たすことができます。いや、果たさなくてはなりません。
(※農商工連携についてはぜひ下記のマイナビ農業への寄稿をご笑読ください。)
さらに多くの市民(消費者)が毎日訪れる場所でもある。
つまり、農業と商工業と市民という、まちづくりにおける3つの重要要素の真ん中にいるのが、直売所という商売です。
さらに、もうひとつ、直売所が小売業における特異点と呼べる点があります。
直売所とは「売上の大半が地元に還元する、ほぼ唯一の小売業である」ということです。
小売業は、とある会社A(または生産者)から品物を仕入れて、消費者に売るのが仕事ですが、仕入れ先のA社は地域外にあることが普通です。しかし、直売所は異なります。
仕入れ先は地元にあるので、その代金は地元に還流します。
もちろん、家賃や人件費といった販管費も地元に落ちますから、売上の大半が地元に戻るのです。
さらに、「しゅんかしゅんか」や「のーかる」では、野菜や鶏卵のみならず、豆腐、こんにゃく、麺類、調味料、お茶、お菓子といった加工品も地元のものを揃えています。変わったところだと、冷凍飲茶なんかも国立市から来ています。これらの代金は、地元の団体や個人に支払われるわけです。
直売所のこの特性が意味するところは、地域への経済的効果が高いというだけではありません。
商取引は、ビジネスライクなものもありますが、基本的に人と人とのつながりです。「しゅんかしゅんか」は多くの取引先と知り合いなので、そこからチャンスが生まれます。
小さな例としては、東京都瑞穂町のお茶農家・西村園さんと取引していたことから、最近はくにたち村酒場製造のオリジナル菓子として「お茶サブレ」(卵は由木農場)を開発することができました。
ときに、小売業の基本方程式は、「(全国ないし世界中から)売れるものを探してきて、それを欠品なく並べること」です。
しかし、直売所は地元のものを優先的に並べるという別の方程式を持っています。すると仕入れ先は小さい農家や小さい工房であることが多いのでどうしても欠品することもあります。それゆえに苦労は多い、というか、消費者に日々ご迷惑をおかけします。
このように小売業としては原則から外れた特異点である直売所は、しかし、地元ネットワークを作っていくことができるという点では、ものすごく優位にあります。
まあ、収益性という面での優位性はちょっと不明なんですが、まちづくりへの貢献ポテンシャルという点では優位というか希望の大きい商売なのです。
なので、「直売所が街の価値を決める」というタイトルは、あながちウソでもないと思っているのです。
ということで、私としては、マイナビ農業の連載を通じて、直売所を起業する人が増えることに期待しています。
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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。