株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2019.11.28

日本最大のシェアビジネスとは?

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

ちょっと前にこんなニュースがありました。
自動車を個人間で貸し借りするシェアビジネスで、借りた車を無断転売する事件が起きているということです。
貸した人が中古車サイトで自分の車を見つけるという事例もあったらしいですが、さぞかしビックリしたことでしょうね。
NTTドコモが運営する「dカーシェア」では、運営者は一切責任を負わないということになっていて、車が見つかれなければ泣き寝入りするしかないというのが現状のようです。

運営者が責任をいちいち負っていたらビジネスとして成立しないでしょうが、一方で、信頼感がないと新しいマーケットはなかなか広がっていかないでしょう。

シェアビジネスの成功にはいくつかの鍵がありますが、「運営者の主体性」、これがかなり重要です。
シェアビジネスをやるとき、運営者はともすると「プラットフォームさえつくれば、当事者間に任せておけば勝手に動く」と考えがちで、運営者が主体性、あるいは情熱を欠くとなかなか広がらない場合も多いです。

シェアをキーコンセプトとする商売は、私が学生時代に立ち上げに携わった空き店舗を活用するNPO法人※でも重要な概念です。
地元で教室ビジネスをやりたい人たちがシェアする「まちかどホール」や、趣味で作った手芸品などの販売場所をシェアする「ゆーから」といった空間を空き店舗に作り、新しいコミュニティを生み出しました。
私が在籍していた時には、買い物代行サービス「買いサポ」を展開しまして、これは商品を宅配するサービスを商店街の複数のお店がシェアするというものでした。もっとも、全然うまくいかなかったんですが。

(参考)『まちが学生を育てる、学生がまちを変える』NPO法人くにたち富士見台人間環境キーステーション

さて、話はかわって、日本で最大のマーケットを誇るシェアビジネスはなんでしょうか?

シェアの定義次第ではありますが、農産物の直売所はその有力候補だと思います。
直売所がシェアビジネスだ、と言っている人はあまりいないと思いますが、すべて委託※で価格は出荷者が自由に決められることからすると、複数の出荷者が売り場をシェアするモデルと考えてさしつかえないように思います。

そして、農産物の直売所のマーケットは1兆円という試算もあります。つまり、農産物直売所は、日本における最大のシェアビジネスなのではないでしょうか?
少なくともWeWorkをはじめとするシェアオフィスよりはマーケットが大きいことは間違いないところでしょう。

そして、ここがちょっとしたポイントですが、シェアビジネスで大事なのは運営者の主体性、運営者の心構えです。つまり、出荷者(農家さん)も大事なのですが、運営しているスタッフの心構えも大事ということですね。
直売所には、「出荷者が自由に置いて、消費者が自由に買っていけばいい」というスタンスのところが散見されます。
しかし、運営者の主体性、言いかえればプロ意識が直売所マーケットを今後さらに大きくしていくためには大事だと思っています。そんな問題意識があって、マイナビ農業さんで連載を書かせていただいています。

(リンク)マイナビ農業『直売所プロフェッショナル』(月2回連載中。副社長の渋谷と交互に執筆。)

(ちなみに、第3回の「こんなにあった!直売所に不毛な安売りがはびこる7つの理由」はかなりの反響がありました。なぜ安売り傾向になってしまうかといえば、シェアビジネスである直売所の運営者は、dカーシェアや民泊のairbnbと同じように、需要と供給を調整しないからです。供給過多になり価格が下がるのです。)

※なお、「しゅんかしゅんか」は委託式ではなく、すべて買取りなので、シェアビジネスとは言えないかもしれません。

さて、エマリコくにたちでは、今月から畑体験事業「農いく!」を始めました。
主に親子向けに、地元の田畑で農作業を体験するプログラムを提供していきます。
地元の農業が食育のためにできることは多いですし、畑が地域に開かれていることも農地を守る法制度を維持していくうえでは大事になります。

しかしながら、農作業を体験するプログラムは、自治体がやっているものや農家さん自身がやっているものなどすでに色々とあります。では、なんでエマリコがわざわざやるのか?

当社のモデルが他と一線を画す視点、それは「シェア」です。

すなわち、畑で食育をやりたい農家さんどうしで、食育のプログラム、ボランティア、ノウハウ、集客媒体をシェアする、ということです。

田畑には美味しい農産物を作るという大切な機能がもちろんあるわけですが、違う形でも地域貢献したいと思っている農家さんは多いです。そして、これからどんどん増えると思います。
一部の農家さんは恒常的に市民向けのイベントや観光農園をやっていますが、大多数の農家さんからするとハードルが高いものです。集客だけとっても、どうやってしたらいいだろう?となるでしょう。

当社は100軒ほどの東京都内の農家さんとお付き合いがあります。当社は流通がメインの会社なので、野菜づくりや果物づくりのプロばかり。でもそうした農家さんは、イベントをやるのは億劫(でもやりたい気持ちはある)な方も多いわけです。

そこで、当社の「農いく!」プログラムを活用してください、ノウハウや運営ボランティアをシェアしましょう、そうしたら苦労が少なく自分の畑でイベントを開くことができますよ。「農いく!」はそんな取り組みです。
※『農いく!』の最新情報はコチラ(Facebookページ)にて。

11月から12月にかけて、4回の「農いく!」を開催しますがどれも違う農家さんの畑で、日野で2回、国分寺で2回となっています。
まさに農家さんにとっての「イベント開催パッケージ」のシェア、です。
農家さんが主役で、当社は黒子、そういう形にしていけたらいいなと思っています。

「頻繁にやるのは大変だけど、たまにはやってみてもいいかな」、そう思っている農家のみなさん、ぜひエマリコくにたちまでお問合せくださいませ。

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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