株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2021.02.14

商品は子どものようなもの

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

先日、農水省主催の「地産地消等優良活動表彰」の表彰式がありました。
(おかげさまで、応募が88件あったなか、食料産業局長賞をいただきました。受賞企業の一覧は下記リンク)
https://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/renkei/210118_16.html

「6次産業化アワード」の表彰式の併催になっていて、全国のいろいろな興味深い活動を知ることができました。(それにしても、「アワード」ってなんかカッコよくていいですね。一方で、地産地消の方のネーミングの地味さ。この格差はなんでしょうか……笑。)

さて、一部ですが、両表彰で登壇されていた会社さんをピックアップしてみます。

●沖縄UKAI養蚕=沖縄県=
養蚕ってだけでも、めちゃキャッチー。ここの蚕が食べるのは、桑じゃなく、キャッサバの葉!
で、織物を作るんじゃんなくて、化粧品や健康食品を開発、販売。

●有限会社サポートいび=岐阜県=
管理する農地は900枚!不作付地、耕作放棄地を積極的に受託、サツマイモを栽培し、干しいもの加工・販売をしている。

●有限会社きたもっく=群馬県=
浅間山麓の豊かな自然でキャンプ場を経営しているところから、養蜂や林業に乗り出し、薪材、家具材、建材を販売している。6次産業はふつう1次から2次や3次に拡大するが、3次から1次・2次に行く『逆6次化』。

●農事組合法人 八幡営農組合=兵庫県=
日本初のデュラム小麦を栽培!
試行錯誤して栽培方法を確立、市内のオーマイ株式会社工場で製麺し、日本初の純国産パスタ「加古川パスタ」を発売した。

いわゆる長野の千曲川ワインバレーを盛り上げている「はすみふぁーむ」さんも6次産業化アワードで表彰されていました。くにたち村酒場でも時折、グラスワインに使わせていただいております。ドライなのにブドウの香りが直截にアタックしてくる、独特の味わいです。
(コロナ禍で、観光需要も大事な千曲川ワインバレーはかなり厳しいということでした。直販サイトのリンクを貼っておきます。)

それぞれのお話を興味深く聞きながら、こんな素晴らしい活動がたくさんあるのだとしたら、日本の農業や地方の未来も明るいな、と思わずにはいられませんでした。

一方で、やはり農業は息の長い取り組み、忍耐強い取り組みが大事だなとも思わされました。
ポッと出てきた会社さんはひとつもない。

八幡営農組合さんが発表されていた「日本で初めてデュラム小麦のパスタの商品化」というのはすごいことだと思うんですが、栽培ごよみもないなか、また多湿の日本では病気が出やすいというなか、6年かけて栽培技術を確立されたとのことでした。

今回の表彰と関係ないんですが、先日、TBSの経済番組『がっちり!マンデー』で、新潟県妙高地方の伝統調味料「かんずり」(辛くてうまい、真っ赤な調味料)が出ていましたが、発売当初はぜんぜん売れなかったそうです。
最近は東京でもよく見かけますが、最初は地元系のスーパーになんとか置いてもらって、そこからジワジワときて今の人気があるということでした。
「かんずり」は、使用するトウガラシは輸入ではなく、「S-30」という地元産のトウガラシを使っています。辛すぎず甘すぎず、大ぶりのこのトウガラシは、何年も交配を繰り返してきたものだそうです。
作り方も、「雪さらし」というトウガラシを雪にさらす独特の製法なのですが、めっちゃめちゃ手作業。なので、来年は生産量を5倍にしてくださいと言われてもできないと思います。
じわじわと、育て上げていくしかない。

ロングセラー商品をいくつも抱える「桃屋」の社長さん(最近は「辛そうで辛くない少し辛いラー油」がヒット)が、「商品は子どものようなもの」と言っていましたが、これは名言だなあ、と。

すぐにバーン!と育つことはない。欠点もあるだろう。
それも含めて愛をかけてじっくり育てていく。

農業分野でのヒット商品づくりは、発想力も大事ですが、長い長い行程も必要。途中で諦めてしまったら試合終了。
忍耐力というか貫徹力というか、そういうことも大事だなあと、表彰式を見ながらしみじみ感じていました。

※※※以下、告知ですが、昨年夏にマイナビ農業で似たことを書きました。八王子の地元米のお酒『高尾の天狗』を題材に。ぜひこちらもクリックしてくださ~い↓※※※

「なんとなく農商工連携」していませんか? 課題は、時間軸の違いにあった!
(マイナビ農業での連載『「なんとなく地産地消」からの卒業』第4回)
https://agri.mynavi.jp/2020_05_20_119071/

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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