社長のBLOG
拝啓 東京農業を応援いただいている皆様
2022年に、生産緑地制度は新しい制度、すなわち10年単位で指定される「特定生産緑地」に移行することになっています。すでに手続きを進めている農家さんも多いそうです。
目下、都市農地の制度はいろいろな変化が進行中です。
(尽力してきた先輩方に最大限のリスペクトを!)
そのなかで注目すべきは、畑を新たに借りる農家さんが増えているということです。
これは明確な変化です。(今までは法制度として難しかったので当然なのですが。)
私たちが応援している”まちなか農業”に、いま新しいムーヴメントが来ています。
やや古い2015年のデータですが、東京都では1つの農家(農業経営体)の平均耕地面積は0.7haです(本稿では法人化している経営体も農家と呼ぶことにします)。
一方、全国平均は2.5ha、関東平均は1.6ha。
東京の農家さんの耕地面積は小さいです。
もちろん、それは意外なことではありません。
話はここからで、では売上高はどうか。
年間の売上高が100万円以上ある農家の比率は、全国平均が41%。
では、東京はどうかといえば、それよりも多い50%ほどです。
全国より多いのは意外じゃないですか?
まあ、単純な平均なので、この事実だけで分析しても仕方ないですが、東京の農家さんも全国と同じかそれ以上に、しっかり農産物を販売していることがわかります。
余談ですが、全国の農業を見たとき、売上高100万円未満の農家は59%。一般的には、100万円に届かない活動は、「商売」とは言えませんよね。農家とは呼べるかもしれませんが、農業経営者と呼ぶのはちょっとはばかられるところです。
したがって、日本の農業を産業として分析するとき、全体の統計から捉えてもあまり意味がありません。半分以上が商売ではないのですから。
(売上が低いことが悪いという意味ではありません、念のため。産業、あるいはビジネスとして分析するのは適切ではないということです。)
さて、売上高が1000万円以上の農家の比率になると、さすがに全国のほうが多くて9%ほど。ですが、東京も5%ほどの農家が1000万円以上の売上を計上しています。
東京の農地面積はどんどん減っているために、モチベーションが低く、稼ぐ力もないと思われがちです。ですが、そんなことは全くない、と断言したいと思います。
当社が集荷に回っている農家さんを間近に見ていても、ほかの産業と比べて遜色のない経営力、生産性を発揮しているというのが偽りのない実感です。
では、ビジネスとしての東京農業の弱点はどこか。
それはものすごく単純。
「農地を広げられなかったこと」です。
チェーンの小売店や飲食店であれば、収益が高ければ、新しいお店を開きます。
農業界でも、地方では経営力のある農家が農地面積を増やしていくのは至極当たり前の光景です。でも東京では難しかった。
冒頭に書いたように、その状況は法改正によって改善しつつあります。
技術の高い農家さんが生産量を増やせるということは、市民にとっても大きなメリットです。
美味しい野菜や果物がより多く流通するということですから。
拡げた農地を耕作するために、街に新しい雇用を生むことにもなるでしょう。
ま、こんな風に偉そうにつらつらと書いておきながら、当社が流通させられる農産物は今のところ微々たるもの。当社が取引している農家さんもどんどん農地を広げたいと思うように、もっともっと頑張っていかねば。
販路あっての農地拡大ですから。
ということで、法制度が変わり新しい時代に入ってきた”まちなか農業”。
これからの展開にワクワクしています。
株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。