社長のBLOG
拝啓 東京農業を応援いただいている皆様
きょうび、都市農業(まちなか農業)をめぐる法制度はどんどん変わっています。
2015年に都市農業振興基本法が成立し、そして今年、「都市農地の貸借を円滑にする法律」も国会を通過しました。
まちなかで農業を続けられる環境がだんだんと整ってきています。
エマリコくにたちは2011年に創業しましたが、当時は率直なところ、このように法律が大きく変わるなど、期待はしても、心の底では本当に変わるとは思っていませんでした。
この間、法律改正のために尽力された方々には、本当に、本当に、頭の下がる思いです。
さて、永田町から吹いている追い風を受け、エマリコくにたちも東京野菜の発信にさらに力が入っているわけですが、多摩エリアの各市自治体にとっても、これまで以上に知恵を絞るタイミングになりました。
国がせっかく整えたものをどう活用していくか、それは自治体の腕の見せどころではないでしょうか。
このブログでは、私見として、多摩エリアの自治体は「都市農業基本条例」を制定すべきだと提案したいと思います。
(なお、日野市にはすでにそうした条例が存在しており、私のオリジナルではありません。念のため。)
内容としては下記のようなことが考えられます。
(1)都市農業の多面的機能を確認し、次世代に引き継ごうという街の理念を明示する
(2)農業後継者育成や技術向上のために必要な施策、予算措置を講じる
(3)生産緑地の貸借や特定生産緑地指定のための、円滑な手続きに必要な措置を講じる
(4)民間企業や有志市民を含めた、都市農業活性化に向けた会議(ネットワーク)を設置する
(4)はとくに大事で、それぞれの街にいる、志ある人たちが集まって情報交換することはとても大事になってきます。すぐに何かやるための会議ではありません。たとえばみんなでマルシェを開催するとか、そういった具体的に目立つことは必ずしもやらなくてもよいです。いろいろ議論した結果、必要と思うことをみんなでやればよいのです。
「農業のことは農業生産者だけで考える」、その気持ちも分かりますが、外からの支援も必要だということもだんだんと理解されつつあると思います。
また、育成や技術向上と入れたのは、産業予算はPRの方に多く費やされてしまうものだからです。もちろん、外部への情報発信、イメージアップに予算を投入することは大事です。
しかし、最終的にブランドを形作るものは品質です。品質が伴わないブランドは長続きしません。
地元ブランドのPRのような目立つ施策は、首長さんはたいがいやりたがります。地味な施策、長い目で地域産品の品質を育てていくという方向性こそ、基本条例のなかで確認すべきだと思います。
ということで、私見ですが、「国の法制度が変わりつつあるいまこそ、自治体にも条例を」ということを提案してみました。
多摩エリアの自治体は「緑が多い環境」を売りにしていますよね。
それがただのキャッチコピーにすぎないのか、それとも次世代に引き継ぎたい価値なのか、それぞれの自治体の本気度がいま問われていると思います。
株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。