株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2024.10.26

How to doに目を向ける

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

先日、一橋大学の授業「まちづくりとコミュニティビジネス」で、講義をさせてもらいました。
いまの1コマは、なんと105分。めっちゃ長いですよね。

でも、まあ、そんなに眠くならない話ができたかなと思います。

今回は、コミュニティビジネスという概念を支える理論について話しました。要点は、社会課題の解決組織を、「ビジネスセクター(第2セクター)の強みを活かして運営する」ということです。
字面だけだとちょっと難しい。

ときに、リクルートSUUMOの調査※で、比較的家賃がリーズナブルな街のなかで「住み続けたい街」として谷保が第1位になったものだから、谷保界隈にテレビの取材がいくつか来ているみたいです。
(※SUUMO記者発表詳細は以下から。けっこう大規模な調査です。45ページから谷保が登場しています。

そのときに必ず取り上げられるのが、大学生と商店街や市民が一緒になって地域活性化に取り組んでいるNPO法人くにたち富士見台人間環境キーステーションです。まいど名前が長くてすいみません。
空き店舗を活用した「カフェここたの」や「まちかどホール」、地域ヒーローの「やほレンジャー」などを運営しています。
この活動については、『学生まちづくらーの奇跡』(学文社)という本が出ていますので詳しくはそちらもご覧ください(もっとも重版かかってないので、中古か図書館で、ということになりますが)。

このNPO法人が展開しているものはまさにコミュニティビジネスであり、私自身がコミュニティビジネスを体験した原点といえます。
それもそのはずで、2003年に一橋大学で「まちづくり」という実践型の授業が始まったときに(冒頭の「まちづくりとコミュニティビジネス」はその後継科目になります)、街でプロジェクトを行ういくつかの班ができたのですが、「コミュニティビジネス班」と呼んでいた班の学生がのちにNPO法人の屋台骨となりました。そのなかに私もいたわけです。

でもって、代々、現役の学生が引き継いできていて昨年20周年となりました。
もしかすると、こんなに短いサイクルで事業承継をしている組織は他にないかもしれないですね笑。

それにしても、学生は入れ替わってしまうのに、なんでそんなに長く続いてきたのだろうか?
取り上げてくれるテレビ番組を見ながら、その理由を考えていました。

ひとつは、場所がある、ということでしょう。

空き店舗を活用したお店を今では6つやっていますが、物理的な場所があることは、存続していくうえで大事ですね。目に見えるものは守らなくてはならない、となりますから。
もちろん、家賃や設備のお金は出さなくてはいけないので維持し続けるのは簡単なことではないです。でも、場所があって人が集まっているからには、やめることもまた、簡単ではないわけです。

次に、寛容さがある

まちづくり界隈では言い古された格言ですけれども、「若者、よそ者、ばか者」が大事。でも、この格言には、4人目の人物が隠れています。やんちゃな奴らを受け止める地元の人がいなければいけないのです。
学生によるまちづくりというのは、毎年、メンバーが変わり、いろんなことがリセットされます。そのことにもまた寛容でなくてはいけない。

最後に、月次で会計をして全員(学生、商店主、市民)で振り返っている。言いかえれば、管理会計がある

これを20年以上、毎月毎月やっています。

私は飲食店経営者の仲間と勉強会をやっていますが、前月の数字を振り返らない人はいないです。そこから学びを得る。
つまるところ、ビジネスをやっている人にとっては当たり前の話です。

しかし、当たり前が当たり前でないのがまちづくりという業界です。

一橋大学での講義でも話しましたが、「社会課題解決の主体として、ビジネスの手法を使う」のがコミュニティビジネスの定義ですけれども、ビジネスの手法を使う、のところが甘くなりがちです。

おそらくは、こういう活動は、目の前の地域の課題をどうしかしよう!という志で立ち上がります。志が強すぎるがゆえに、運営や組織について頭が回らないのではないかというのが私の仮説です。

What to doについて考える、つまりこの街でやるべきことを考えるのは得意ですけれども、How to doについて考える、会計や組織の運営方法になかなか目が向いていないように感じています。

コミュニティビジネスやソーシャルビジネスの特質は、「ビジネスセクターの強みを活かす」ことにあります。
ここで強調したいことは、商品・サービスを販売すればビジネスセクターの強みを活かしていることになるのではありません。
ビジネスセクターには、管理会計、マーケティング、人材組織など色んなノウハウがあります。それも書籍やYouTubeで簡単に手に入る時代です。
ビジネスの形態を取っているということの利点のひとつは、非営利活動に比べて、それらのノウハウをそのまま導入しやすいということなのです。そのことに無自覚なコミュニティビジネスが多いと思います。

つまり、ふつうのビジネスにおける当たり前をコミュニティビジネスもやろうということです。そのことによって継続性と発展性が得られるのです。

あるいは、こういう言い方もできます。まちづくり活動は立ち上がった瞬間から、どのように継続させるかを意識して運営されるべきです。
まちづくり活動を終了させる時は、対象としている社会課題が解決された瞬間であるべきで、そうでないかぎりは継続される必要がありますから。

僕たちは、How to doについてもっと目を向ける必要があるのではないでしょうか。

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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