社長のBLOG
拝啓 東京農業を応援いただいている皆様
あけましておめでとうございます。
平成最後の年、っていうことで、「時代」について。
年末から年始にかけて、歴史を振り返る、それも幕末から近現代にかけての歴史を振り返るテレビ番組をよく目にしました。歴史研究は日進月歩で、私たちが学校で習っていたときと「歴史」もだいぶ変わってきているようです。
それはともかくとして、明治憲法発布が明治22年、つまり西暦で1889年であること、それをテレビ番組で聞いて、明治維新から22年しか経っていないのだ!ということにあらためて感動してしまいました。もちろんその年号は学校で習ったものでしたけども。
たった22年で。22年前までは江戸幕府があったのに…。
私は、現代について「時代の変化が激しくなっている」といった言説はマユツバだと思っている人間です。
「時代の変化は一介の人間には追いつくのがたいへんだ」という表現なら正確ですが、いまの時代の変化スピードがことさら速くなっているというのは事実誤認か、意識的に言っているのであれば詐欺的広告です。
なぜ「時代の変化が激しくなっている」と信じられているかといえば、(1)それによって何かしらの商品を売りつけたい、(2)政治家を典型例としてそれによって存在意義を守りたい、(3)業界によっては変化が激しくなっている場合があって(例:再生医療の業界)、そうした業界の発言は目立つ、といった理由があるだろうと思っています。
(他にも仮説はいろいろあるけど割愛。)
リーマンショックは2008年の出来事でした。(リーマンショックが起きたとき、私は転職活動中で、最悪のタイミングでした…)で、それから10年以上が経過しました。
さて、時代をさかのぼって、ニューヨーク発の世界恐慌は1929年の出来事でした。
この10年後、1939年までに何が起きていたかというと、満州はとっくに独立し(1932年)、犬養首相はクーデターで殺され、国家総動員法が制定され、経済面では金本位制(金解禁)とその再禁止が行われ、そしてあと2年で真珠湾攻撃を迎えようとしている。
で、1939年に何があったかといえば、ドイツのポーランド侵攻です。
それと比べて、リーマンショック後の時代のなんと「何もなかった」ことか。
イギリスのEU離脱なんて、ちっぽけな話です。
上の例は特に変化の激しい部分を切り取っているのではなく、私が思うに、近現代史のどこを切り取っても、それと比べていま現在は変化が激しくない時代です。
もちろん、インターネットが発達し、スマホが登場し、AI技術が発達し、といったことはあるけど、たとえば第1次世界大戦時の飛行機の技術と第2次大戦時のそれとを比べたときに、現代のIT技術の進歩スピードが物凄いスピードだとは思えません。もちろん、我々凡人からすれば追いつけないくらいに速いんだけども。
そうしたときに、何を言いたいかといえば、「どんどん変化している」ものがある一方で、「変化していないもの」「変化が遅いもの」に目を向けることを忘れてはいけないということです。
あるいは、変化が激しいごく一部の物事(典型例は東京オリンピック)に注目するがあまり、商売の本質を見失わないようにしないといけない。
「時代の変化をとらえる経営」といえば何だかコンサル会社のキャッチコピーのようですが、むしろ「時代の不変化をとらえる」ことにこそ経営のだいご味があるように思います。
『カンブリア宮殿』で村上龍がいつも強調していることって、基本的にその部分じゃないでしょうか。
目の前の変化も大事ですが、周囲の過剰な煽り、ミスリードには気を付けないといけません。
より大きな視野で、社会に根源的に必要とされていることをこそ見極めていく必要があるし、それが長く続く会社を作るための秘訣ではないでしょうか。
株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。