株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2021.05.29

株主総会と日本最大のクラウドファンディング

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

先日、10周年の株主総会が終わりました。新しい目標も発表し(いずれブログでも公開できるかと思います)、多くの励ましのお言葉をいただいたところです。

うちのような小さな会社に株主がたくさんいるものですから、「そんなに株主がたくさんいたら運営が大変じゃないの」と言われることもあります。
まあ、総会にあたって郵送する書類が増えるくらいで、さほど大変ということでもありません。もちろん、株主総会にあたってしっかり説明を準備することは骨が折れることです。でも、それは人数とはあまり関係ありません。

それよりも、年にいちど、客観性のある複数の目でしっかりとチェックしていただく。そういう場を自分に課す。すると、ものすごく多くの学びがあります。
それに、株主のみなさんからは多くのアドバイスをもらえますし、野菜の卸先となるスーパーマーケットを紹介してもらったこともあります。
メリットはなかなか多いのです。

ちなみに、当社は上場を目指していない会社なので(それなのに株主が多いことによく驚かれます)、出資していただいている方はミッションに共感してくれている方ばかりです。
ちょっと偉そうにいえば、株主の皆さんは、そうしたミッションをともに進めていく同志なのだと私は考えています。

日経ビジネス2月15日号で、小さな企業のサバイバルについて書かれた特集において、北陸地方では「株主コミュニティ制度」が多く見られる、とありました。
『地域密着型企業の利用が多く、例えば富山地方鉄道は100株以上を持つ株主に回数乗車券を送っている。子どもが通学のために富山地方鉄道を使うようになったので株主になり、その学生の卒業後は次に入学する子どもの世帯が株主を購入するなど、地元利用者による循環が起きている』とのこと。

また、同特集では、株式投資型のクラウドファンディングも増えていることも指摘しています。

こうした動きの共通点は、応援の気持ち、あるいは地元愛といった感情を株式に込める、ということですね。
お金に「経済的交換価値」以外のものを乗せる。あるいは、入れこむ。

当社でも昨年夏には、コロナ禍を主因として、クラファン「エマリコ応援プロジェクト」を実施し、多くの支援をいただきました(これは株式型ではなくリターン購入型)。

大きな政策のなかでは、「中小企業支援」ということで一括りにされますが、中小企業はじつに多様です。
そうした多様性のなかで、すっごく応援される「愛されキャラ企業」が地元にいくつかあったっていいんじゃないか。そう思います。

私たちは日々の生活や仕事のなかで、お金をあっちに動かし、こっちに動かしということをしているわけです。
そこに想いを載せられないか。そういう壮大な実験が、ローカルレベルでいま始まっています。

で、さらに視座を広げる質問を出してみます。

「日本で最大のクラウドファンディングは何だと思いますか?」

 

私は、税金、だと思います。

税金は、私たちの手元から自動的にどこかへ行ってしまうわけですけど、なけなしの利益が無くなってしまってもう本当に悲しいわけですけど、私は「きっと誰かの役に立てよ、バイバイ」と言って送り出しています。
きまって銀行の窓口の職員さんに変な顔をされますけど(笑)。

税金は、憲法に「納税の義務」として書かれているわけですが、「義務」という言葉の元々の意味合いは、強制されるということではありません。本来はもっと積極的な行為を指します。
法的義務と道徳的義務は違うものとして認識しなくてはなりませんが(obligationと訳すかresponsibilityと訳すかということかも)、さて、納税の義務はどちらでしょう?
そもそも、憲法も租税関係法も、国民が直接選んだ議員が決めたものなのですが……?

もしも、多くの人が、公共のために積極的にお金を出すのだとすれば、これをクラウドファンディングと呼ばずして何と呼びましょう?

であるからには、税金というお金の流し方、お金の使い方について、もっと自分の気持ちを乗せられないか、という思考実験などしています。
その視点があれば、お金の使い道を決める人々を選ぶこと(選挙)にも真剣になれますしね。

こういう言い方もできます。
私たちは日本国の株主なんだ、と。

ま、ちょっと話が広がりすぎましたが、こんなようなことも考えながら、株主総会も無事に終了しまして。
株主や地域のみなさまに心から感謝を申し上げつつ、次の10年、想いをしっかりこめたビジネスを引き続き展開していきたいと思っている次第です。

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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