株式会社エマリコくにたち

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社長のBLOG

2024.01.31

守備範囲を少し広げてみよう(シビックプライド)

背景 東京農業を応援いただいている皆様

先日、一橋大学の講義「まちづくり」の最終発表に行ってきました。
班に分かれて、国立市内の課題について調査し、提案を検討して発表するというものです。実際に街に出て、活動している団体のヒアリングにも行きます。

農業関係では、新規就農の課題についての発表もありました。あるいは、団地に活気をもたらすためにどうするかとか、文化・芸術にもっと時間やお金を使ってもらうにはどうしたよいか、などなど。

就職してしまうと、こういうローカルの課題と向き合うことは当面ないと思います。なので、大学生のときに、街にはいろんな課題があり、それと奮闘している人々や団体がいることを知るのは、わりと価値があることなのではないか、と思います。

最近は、「シビックプライド」という言葉をよく聞くようになりました。
(そういえば、小さい頃に家族の車はホンダのシビックだったな。まったく関係ないけど。)

くわえて、「シチズンシップ教育」という概念も出てきていますね。

街に対する愛着や誇り。みなさんは必要だと思いますか?

そもそも、誇りを持っていた方が、精神的に豊かでいられる、というのはあると思います。
それ以上に、私が注目するのは、その感情がベースにあると、多様な住民が課題解決について団結できます。住民は多様なスキルを持っているので、一緒に協働できればすごく強い。
シビックプライドは協働するベースになります。これは大きい。

これは「愛国心」に似ています。
あー、いや、愛国心という言葉を使うと誤解がかなりありそうなので、「日本をひとつの塊と考え、誇りに思う気持ち」と表現しておきます。

能登半島で地震がありました。
日々流れてくるニュースはじつに痛ましいものです。
これをとても痛ましく思い、時間があればボランティアに行きたい、時間がなくてもせめて募金はしよう。
そう思わせるのは、「日本をひとつの塊と考え、誇りに思う気持ち」があるからです。

お世話になっている知人がアルゼンチンを今旅行していて、かなり大規模なストライキが起きているらしいです。
でも、日本に住んでいる私たちには、それを聞いてもとくに情動が起きません。申し訳ないことだけれど。
本来は、同じ地球に住む者なのだから、ストライキをするくらいの強烈な課題がそこにはあるわけで、何か助けられないか?と思うべきなのかもしれません。しかし、それはちょっと難しい。
能登地方とアルゼンチンは、私たちにとって、明らかに違うものです。

そのように考えると、助け合い、協働して課題を解決するには、ベースにある誇りとか連帯感が必要だと分かります。

地球プライド < 国プライド < 県プライド < シビックプライド < 家族愛

こういう関係になっているわけです。
これは、どれが一番大事ということではなく、どれも大事です。

とはいえ、最低限の衣食住が満たされている現代では、課題の多くはローカルに横たわっていることが多いですし、国レベルのことは政治家に任せざるをえないところも多いので、シビックプライドは私たちの幸せのために大変重要です。

前にこのブログで『イチローにも守備範囲がある』と書きました。
これはTPPの文脈で書いたものですが、人間、自分から遠くなればなるほど、愛着も協働も難しくなるのです。

いちどTPPのような国をまたいだ仕組みを作ったとして、短期的にはうまくいっても、長期的にそれを柔軟に変化させていくことはかなり難しいと思います。
環太平洋プライド、を持っている人はほぼいないからです。(口先だけならいるかもしれない。)
そうすると、ただの利害対立にしかなりません。

各国の政治家が優秀であっても、マネジメント可能な守備範囲は存在します。
国という単位は連帯して課題解決できる最大単位のような気がします。現実的には。

シビックプライドの場合は、ちょっと守備範囲を広げましょう、という話かもしれません。

家族や身近な友人の幸せを願わない人はいません。その範囲での課題解決はみんな頑張ります。
ちょっと余裕のある人は、守備範囲を広げて、街への愛着を持ってもらい、そこでの幸せづくりにも汗をかいてもらう。こういうことだと思います。

話が少し散らかってしまいました。
ともあれ、一橋大学を卒業する優秀な若者が、シビックプライドに触れることは意義が大きいと考えます。この授業が今後も継続してほしいです。

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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