社長のBLOG
拝啓 東京農業を応援いただいている皆様
「地産地消」という言葉、どのくらい馴染みがありますか?
知っているよという方は多いと思います。
一方で、地産地消が大事だということで盛り上がった時期もあったのですが、以前ほどには色々なところで使われる言葉ではなくなってきたように思っている今日この頃です。
いや、私がそう感じているだけで、ふだんからめっちゃ使ってるよ!という人もいるかもしれませんけれど。
地産地消という言葉の登場頻度が減っているのは、いくつか理由があると思います。
大前提としては、中規模以上の直売所がない街の方が珍しいですし、地元野菜を学校給食にまったく使っていない街の方が珍しいです。つまり、ある程度は地産地消が定着してきたので、わざわざ口の端に上ることがなくなっている面はあるでしょう。
そのうえで、考えたいのは、①技術的な側面、②需要の総量、③市民の心理、の3つです。地産地消はこの3つのハードルを乗り越えなくてはいけない。
①技術的な側面。
地産地消は思う以上に難しい、ということです。
流通という仕組みは固定費でできています。そうしたときに、はざかい期がどうしても邪魔をしてくるわけです。
また、規格が緩いのが地産地消のよいところだと農業者には理解されているのですが、需要側としてはべつに規格が緩い方がベターだということはありません。
学校給食において大き目のニンジンを欲しがられる(調理の手間が減るので)といったことはありますが、これは規格が市場と異なるということであって規格を緩くしたいのではありません。
マッチングが難しいというのもあります。
「安定供給こそが技術だ」と喝破している農家さんを何人か知っていますが、地産地消を戦略としている農家さんでそう考えている農家さんはどちらかといえば少数派です。
私個人としては、天候に左右される農業は、供給が不安定なのが自然な姿だと思いますので、需要側があわせて欲しいなあと心のなかでは思っています。ただ一方で、自身で飲食店も経営しているので、安定しないのは本当に困るというのも分かります。
そういうところで、今週はネギが多いから買ってほしい、でも来週はネギは減ってホウレンソウが多い、といった状況下、きちんと需要と供給を合わせていくというのはめちゃめちゃ難しいわけです。
その点、やっぱり青果市場はよくできた仕組みです。
(市場の機能はすごい、ということは以下のブログ『「あえて愛を伝えない」という愛』(2021年8月)で述べたところです。 https://emalico.com/blog/secret_love/ )
そうしたところで、なんとか流通の仕組みを構築したとしても、②需要の総量がないと、一生懸命マッチングしたところで徒労に終わる、ということになります。
流通事業者からすれば、ネギ10本をマッチングするコストと、ネギ100本をマッチングするコストはほとんど同じです。
だから、需要の総量は、地産地消を担う事業者にモロに効いてくるわけです。それなのに、多くの街で人口は減少局面に入っています。あるいは、共働きや高齢化で、惣菜、冷食、宅食もどんどん広がっています。
需要の観点からも、地産地消はより難しくなっていると言えます。
ちなみに脇道に逸れますが。
年間数十億円以上売る、バケモノのような直売所が全国にいくつか出てきているわけですが、こういう経営的に素晴らしい直売所は以前よりも広域で集客しているか、もしくは観光客の需要を取り込んでいます。これを地産地消というべきかは地産地消の広さをどう定義するかによります。
バケモノ直売所はブラックホールのように需要を吸着し、その裏には売上が低迷している直売所が商圏内に複数あると考えてまず間違いないところで、地域全体で地産地消が広がっているかは微妙なところです。
地元の農業者さんからしても、すごく売れている一か所に持って行くだけのほうが楽なので、その意味でも、直売所は優勝劣敗が進みやすい構造であるといえます。
③市民の心理。
現在の地産地消は、生産者の名前が分かり、新鮮な農産物が手に入るというところで長らく止まっているように見えます。数十年前からすればだいぶ進歩していますけれど。
でも、もっと先の、市民の感動という次元にまでは至っていないのではないでしょうか。
千葉商科大学の小口広太先生は、これまでの流通を「地産地消2.0」と呼び、これからは「地産地消3.0」に進化することが必要だとおっしゃっています。
地産地消3.0の方策、つまり地産地消が感動を呼ぶための方策については、またどこかで書きたいと思います。ここでは、マイナビ農業での小口先生のインタビュー記事をシェアしておきたいと思います。
とにもかくにも、感動を生んではじめて地産地消が完成する。
ここで言う感動とは、映画や音楽やスポーツ観戦から感じるような、そのくらいのインパクト量の感動のことです。
そのことを私たち地産地消の推進者(流通事業者、行政、農協、メディア等)は忘れてはいけません。
前にも書きましたが、私は学校給食への地元野菜の納入に携わっていたことがあります。
地元比率の数値目標があり、それを目指して頑張っていたのですが、違和感を感じてもいました。
「地元野菜を納入したとて、子ども達はどのくらい喜んでいるのか?」、「大人側の自己満足ではないのか?」という思いでした。
もちろん、子どもたちに感動を届けている素晴らしい取り組みも知っています。でも、当時の私は力不足でそうできなかった。多くの自治体では、学校給食の地産地消推進は大人側の論理にとどまっていると推察します。
心を動かすところまでいかないと広がらないのは、どんな分野でも同じです。
地産地消という概念への注目がもう一歩足りないのは、そこのあたりなのかな、と。
地産地消は心を動かせるのか。
地産地消を推進する私たちの覚悟と工夫が試されていると思います。

株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大商学部在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。「東京農サロン」監修。東京都東京エコ農産物認証委員会委員(R7~R9)。