株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2024.08.23

3&3の概念とは。3つのもので結ばれ、3つのものが流れる

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

突然だけど、組織設計の話をしよう。

いま東京都は「起業家教育」っていうのを推し進めているらしい。それで、こんどある高校で「起業家教育」の一環で話をすることになった。

どんどん起業家を生むことは賛成だし、少なくとも、サラリーマンや公務員になることだけが選択肢じゃないことは教育現場で強調すべきだと思う。

でも、その準備をしているなかで、起業どころか、そもそも組織の動かし方って学校で学ばないな、と気づいた。
ビジネスだけでなく、行政でも政党でもボランティア組織でも、なんでも組織によって物事は動くのである。それなのに教わらない。

世の中でリーダー的なことをしている人は、部活動でキャプテンをやっていたとか、そういう人が多いように思うが、これは実体験から組織を動かす術を学んでいるパターンといえるだろう。
ま、じっさい、実体験からしか学べないことが大半ではある。

しかし、組織の設計、ということにフォーカスする習慣を持っているだけで、実体験のときの学びがより深くなるはずである。

ちょっと話が変わるけど、学校の日本史の授業、あるいは教科書って、WHAT TO DOばかりを説明する。

京都に入った織田信長をはじめ、地方でも有力な大名が勢力をどんどん広げた、とか。
これは何が起きたか、何をしたか、の説明である。

だけど、大きくなったところと、大きくならなかったところの違いの方が僕は興味深い。
戦国大名で大きくなったところは、必ず中央集権化に成功している。
いや、中央集権化が意識的にどこまで行われたかは怪しいが。
大きくなる前には、必ずといっていいほどお家騒動がある。そしてそれを鎮圧、粛清しているという経過を経ているのだ。その過程で、主従がより明確化し、直属部隊が大きくなる。
織田家はもちろん、毛利元就、武田信虎(信玄の父)、上杉謙信、大友宗麟、みなそうである。

そういうHOW TOのところを日本史の授業でももっと説明したらいいのになあ、と思っている。
日本の教育は、HOW TOを軽視しがちだと思うのだが気のせいだろうか。

もちろん、部活動とかでどんどん粛清をすべきだと言っているわけじゃないけど(笑)。
組織のあり方で、結果がまったく変わってくるということを教えたい。

話を戻そう。
組織設計の話である。

僕は、組織を考える時に、3つのもので結ばれ、3つのものが流れている、と考えると分かりやすいと思っている。

組織というのは、複数人が結びつくことで成立しているわけだが、結びついている理由は3つある。

契約
貸し借り

である。

契約は雇用契約をはじめ、就業規則や決裁権限、組織図で示された上司部下の関係といったことである。
命令によって組織が動くときは、契約という結びつきが機能している。

貸し借り、つまりギブアンドテイクも組織を作るうえで大事な要素だ。
同僚を助けてあげるときには、逆に自分が困ったときに助けてもらえるかもしれないと考える。あるいは、支援した同僚が業績を上げることによって、会社全体でボーナスが増えて自分も得するかもしれない。
あるいは、職場の雰囲気をよくすることは、自分が働きやすくなることにもつながる。

これをいつも意識的にやっていたら計算高い人だけど、無意識下では、人間はあまねくそういう風に動いている。

そして最後が愛、である。

青臭いことを言うようだが、これが一番大事だ。

貸し借りと愛の違いはなにか。
一方通行かどうかである。

見返りを求めない。それが愛である。

組織は、この3つをバランスよく使って繋がっている必要がある。
ふつうは、どれかに偏ってしまうのはよくない。
でもって、愛が一番大事と言った意味は、経営者が意識しなくてもほかの2つはある程度維持できるからである。愛は、経営者がつねに抱いているときにだけ、組織に根付く。
だから一番大切にしておかないといけないと思う。

さて、そうして個人と個人が塊となったところに、3つのものが流れるのが組織というものである。
この流れをスムーズで健全にすることが、組織運営だと言っていいだろう。

その3つとは、

お金
情報
感情

である。

体のなかに血液やリンパ液がちゃんと流れていないと不健康になるのと同じく、組織ではこの3つがうまく流れている必要がある。
でも、脳が意識的にこれらを流しているのではないように、命令して流すというものではない。ここが難しいわけだが、意識しなくても健全に流れるようにする。
それが組織を設計するときの腕の見せどころである。

ちなみに、管理会計の概念はその助けになってくれる。
(小規模な組織の大半で、管理会計と財務会計をべつの概念として扱っていないが惜しいことだと思う。)

組織というものについて学ぶとき、何かしらの概念、ツールを持つ必要だと思うが、この「3&3」の概念は、分かりやすくて気に入っている。

とくにまちづくり系の組織では、何をやるかを重視するが、どういう組織を設計するか、がおざなりになりがちに見える。

契約、
貸し借り、愛情のどれが強い組織ですか?
お金、情報、感情はきちんと巡っていますか?

この問いに答えるところから、組織の設計を見直すといいんじゃなかなあ、と思う。

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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