株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2025.12.20

それは甘んじて受けるべき代償

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

「はるみ」という品種をご存知ですか?

柑橘を思い浮かべた方、それも正解です。

ですが、今日はお米の品種の「はるみ」。

「はるみ」は、私の出身地、神奈川で開発されたお米の品種で、湘南の晴れた空から名付けられたのだそうです。
コシヒカリとキヌヒカリを交配させています。
キヌヒカリは聞きなじみがない方もいるかもしれないですが、東京都の田んぼではよく作られている品種です。

はるみの味の特徴は、親のコシヒカリよりはややあっさり寄りですが、コシヒカリがもともと力強い系統なので、バランス型といえると思います。そして、なんといっても粒立ち。これが素晴らしいです。
お米に対して粒感を求めるかは人それぞれだと感じていますが、私個人はなんといっても粒立ち。粘りもだいじですけど、しっかりとした粒感が大好きです。

今年のはるみの新米を買ってきました。多摩市産。
これがうまい!まじで。
味がねっとりしていないのもあってバクバク食べられる。

前もこのブログに書きましたけど、多摩市の聖蹟桜ヶ丘の近くには、まだまだ田んぼが残っているんですね。
そして、東京都産のお米も美味しい。きっと常識が覆ります。ぜひ試してみてくださいね。
(アンテナショップPonteで絶賛販売中。アンテナショップPonteには、友好交流都市である信州富士見町産のお米(コシヒカリ、ミルキークイーン等)もあるので食べ比べもしてみてください。)

さて、そんな風に地元のお米を味わって食べながら考えるに、「お米が大好きだ」って思うのは、小さいころにどんな食文化に浸っていたかによると思います。お米が大好きなのは日本人なら当たり前のことかもしれません。でも、現代では当たり前じゃなくなっているかもしれない。
パンもラーメンもパスタももありますからね。うどんも多くは外国産小麦ですね。

でもって、食料自給率の話なのですが、お米の食料自給率はひじょうに高いわけです。
お米を食べまくっていたら食料自給率はあがります。
あと、食料自給率を下げている大きな原因のひとつに油脂があって、これはあまり注目されていない観点なんですが、油脂ってものすごい高カロリーですから、カロリーベースでいうと食料自給率への影響が大きいです。つまり、油脂を使った料理を食べれば、自給率が下がります。
(まあ、カロリーベース自給率にあまり意味はないとも私は思ってますが、それはまた別の機会に。)

自給率が意味するところはなにか、これは本ブログでも以前に指摘していることですが、

「国内産と外国産のシェア争いの成績表」

です。

田畑からの供給量の成績表ではありません。

マーケットでどのような選択が行われてるか?が自給率という数字になります。
油脂でいえば、国産大豆の油を使っているのか、海外産の油を使っているのか、ということです。

言うまでもなく、これは消費者がどういう選択をしているかの裏返しです。

にもかかわらず、今般のコメに関する報道を見るにつけ、あまりに他人事すぎませんか?

長期にわたって日本のコメの需要は下がり続けてきました。これは消費者側の話です。
農業政策の責任がゼロとはしませんが、みんなが農業政策を外野席から語っているのは違和感マックスです。

ただただ日本人がコメを食べてこなかった。
だから離農する。新規就農も少ない。
じつにシンプルな話です。

ラーメンも美味しい、うどんも美味しい、パンも美味しい。
もちろん僕も大好きです。

お煎餅よりスナック菓子。日本酒よりビール。

美味しいと思うものを選ぶのが悪いということではないです。
でも、コメ農家が減っていることを他人事のように批判してんじゃねえよ、ってことです。

端的にいえば、同じ報道番組のなかで、人気のパティスリーやベーカリーやラーメン店の紹介をしておきながら、別コーナーで「コメ農家を守ることが重要ですね」。
いやいやいや!

自給率が意味するところはなにか。それは、

「消費者の選択の結果表」

それ以上でもそれ以下でもないのです。

なのに、自給率を農業政策の成績表のように言う人が、有名な識者にもいますけど……。

コメ産業の今の形は国民の選択の結果です。
コメ価格が急激に上がったり下がったりするならば、その選択の代償です。

ラーメンを食べるのが悪ではないです。僕もラーメンをよく食べますし、しゅんかしゅんかでもパスタを売っています。
言いたいことは、代償は甘んじて受けるしかないということです。

自分は関係ないといった姿勢をしている報道やSNSのコメントに引きずられないようにしたいものです。

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大商学部在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。「東京農サロン」監修。東京都東京エコ農産物認証委員会委員(R7~R9)。

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