株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2025.04.28

直売所の優勝劣敗。場所貸し業からの脱却を!

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

このところ、多摩エリア以外にある直売所を訪問する機会が何回かありまして。

思うことは、とにかく直売所業界にはプロフェッショナルが不足している、ということです。

プロフェッショナルとは、自ら主体的にPDCAを回していく、ここで稼ぐんだという気合いがある、そういう存在です。
ただ育成には時間と忍耐が必要なんですよね。

ときに、マイナビ農業に寄稿した記事でも指摘したんですが、直売所というのはインフレに弱いのです。

なぜかといえば、農産物は委託契約で預かっているにすぎず、販売委託手数料をもらうビジネスモデルだからです。販売委託手数料の料率は一定なので、インフレ時代で運営コストが上がっているからといって粗利率を上げるということができないのです。販売単価を上げればいちおう粗利益の総額は増えますが、それとて、販売単価の決定権は生産者にあって店舗にはないのです。

その意味で、直売所とは、小売業の形をしながらも場所貸し業的な側面があります。
場所貸し業の意味は、店舗自体が消費者に対して生んでいる付加価値が、他の小売業に比べて相対的に低いということです。付加価値が低ければ乗っけられるマージン(販売委託手数料)もおのずと限定的になります。

そこに追い打ちをかけているのがキャッシュレスの決済手数料です。
キャッシュレスの比率は年々増加しており、クレジットカードや交通系ICカードでは売上の3%超を持っていかれてしまいます。

販売委託手数料(たとえば20%)は簡単に変更できないので、3%超がおのずと営業利益率からマイナスになってしまいます。
今後の直売所と生産者との契約は、決済手数料を考慮したものに移行する必要があります。

いずれにしろ、00年代から急速に増えた第3セクターや農協が運営する共同直売所はデフレに後押しされた部分があります。安いことが差別化ポイントになっていたのです。
農家の生産コストも上がっている現在、そこから脱却しなくてはいけない。お店としての付加価値を生みまくる必要があります。場所貸し業からの脱却です。
でも、おそらく組織の文化として染みついていますから、かなりの難作業です。

他の産業でもよく同じことが言われますが、ここから10年で、直売所業界は、優勝劣敗がそうとうに進むと思います。
赤字を何かしらの形で補填している直売所も多いですが、その赤字幅が大きくなるということです。設置母体も支えきれないかもしれません。

手を打つなら早い方がいいです。
客足が遠のいてからでは遅いです。あるいは、地域の生産者から見捨てられてからでは遅い。

店舗としての付加価値を生めるかは、ひとえに店舗現場にプロフェッショナルがいるか、にかかっています。
直売所プロフェッショナルの育成には時間がかかります。今すぐ、すべての地域で取り組むべきです。

※※※※※※
直売所経営のコツについては、マイナビ農業の連載「直売所プロフェッショナル」をご覧ください。個別のアドバイザリーも受け付けております。
↓直売所プロフェッショナル最終回↓
「直売所は誇り高き仕事だ! その主体性を阻む6つの環境【直売所プロフェッショナル#43】
https://agri.mynavi.jp/2021_04_04_153820/

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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